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九州の玄海灘に住む漁師と、百済(朝鮮半島南西部の660年に滅亡した国)の女性との悲劇的な運命を描いた昔話です。1977年のボローニャ国際児童図書展グラフィック大賞(青少年の本の部)を受賞した作品です。著者の米倉斉加年さんは1976年に『魔法の使い方を教えます。』で、ボローニャ国際児童図書展グラフィック大賞(子供の本の部)を受賞しており、同賞を2年連続受賞するという快挙を成し遂げています。また、中学の教科書にもなっている絵本『おとなになれなかった弟たちに…』も忘れがたい名作です。世界的に著名なグラフィック賞を受賞しているだけに、圧倒的な描写力と繊細さを兼ね備えた、人々の創造力を刺激するようなイラストです。時には物語の内容とぴったりマッチしていたり、時には少しずれていたりと、常識的な思考回路に挑戦してくるようなイラストの数々です。なお、著者の米倉斉加年さんは「座頭市と用心棒」「男はつらいよ」シリーズなど多数の映画や数多くのテレビドラマに出演している著名な俳優でもあります。
衝撃的なのはイラストだけではありません。方言を多用した文章もとても力強く印象的です。著者のあとがきでは、著者は福岡の出身で、玄界灘のすぐ向こうにある朝鮮を小さいときから身近に感じており、日本と朝鮮との長い歴史を子供に伝えたいと思ってこの絵本を作ったと書いています。このお話はまったくの作り話だそうですが、それが信じられないぐらい、読者を物語に引き込んでしまう力があります。一度読むと、勝手に数々の悲劇を生んだ長い日朝の歴史の「印象」を感じ取ることができた気になってしまいます。
雰囲気を伝えるため、絵本の文章の出だしのみ、以下に引用してみます。
むかし むかし
倭ノ奴ノくにの奴津に阿羅志という漁師のおったげな
阿羅志はいつもひとりで海へ出た
遠くのほうばじっとみつめて
どだい黄泉のくにでも見るように
遠くの方ばじっとみつめて沖へ出た
・・・
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