ぼくはくまのままでいたかったのに  < 西洋の作家 >  
絵本のデータ
『ぼくはくまのままでいたかったのに』 ぼくはくまのままでいたかったのに
(The Bear Who Wanted to Stay a Bear)
著者(文章): イエルク・シュタイナー (Jorg Steiner)
著者(絵): イエルク・ミュラー (Jorg Muller)
翻訳者: 大島かおり (Kaori Oshima)
出版社: ほるぷ出版 (1978/10/15)
ISBN: 459350080X
 
ページ数: 32ページ 縦: 254mm 横: 254mm
対象年齢: 主に大人向け  文字数: ふつう
(上記サイズなどの情報はエディションによって違う場合があります)
 
おすすめ度: 
定価: ¥ 1,470
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  テーマ: ユーモア、ナンセンス絵本    主人公: くま
   感動度 低  知識学び度 低  笑い度 中  悲しさ度 中
   ユニーク度   しつけ度 中  わくわく度 低  いやし度 中
   絵の精密さ   絵の美しさ   絵のかわいさ 中  デザイン性 
  ストーリー

木の葉が落ち、雁が列を作って南へと向かう頃、風の冷たさを身にしみながらも、くまはもう眠くてしかたがなかった。くまはお気に入りの洞穴にねそべり、冬の間中眠った。でもその間に人間たちがやってきて、洞窟の上に工場を建ててしまった。冬眠から目覚めたくまが、洞穴の外に見たものは、変わり果てた風景だった。くまがぽかんとしていると、工場の職長がくまにどなりつけた・・・。

  この絵本について

 人間の身勝手さをシニカルに描いた、イラストの美しい絵本です。くまはのんびりと暮らしていたのですが、冬眠中に洞穴の真上に人間が工場を建ててしまいます。冬眠から出てきたくまは、工場職長に見つかり、「とっとと しごとにつけ」と労働者に間違えられて怒られます。くまはこしを抜かすほど驚き、「あのう、すみませんが、ぼくは くまなんだけど」と言うも、「くまだと!ふざけるな!」と信じてくれません。
 職長はくまのことを人事課長に、人事課長は副工場長に、副工場長は工場長に、工場長は社長にと、階層式に自分を人間と認めないくまのことを報告するのです。人間は職位が上がるにつれ、どんどんえらそうで横柄になっていきます。人事課長は「うすぎたない、ひげもそらない、なまけもの」とくまをよび、工場長は「きたない やつだ」とさらにきつく言い捨てます。一番えらい社長は、いつも用事が無くて暇で、社長の部屋には、くまの頭つき毛皮のカーペットが敷かれてあります。社長はくまを動物園とサーカスに連れて行って、本物のくまを見せようとします。そして動物園のくますらも、社長と車にのっているくまをくまと認めません。サーカスのくまも、観客席に座っているくまをくまと認めません。
 いよいよあきらめたくまは言いなりになり、顔のまわりのひげをそって、工場ではたらく日々を過ごします。タイムカードをいれ、右も左も分からずに、ののしられながらも、しばらく働きます。でも木の葉が色づき冬が近づくにつれ、くまはだんだん眠くなります。ちゃんと働かないくまは、くびにされてしまいます。少しうれしいくまでしたが、モーテルにも泊めてもらえず、雪の中森に入ります。でも森の中でお気に入りの洞穴を目の前にしても、冬眠するすべを忘れており、のたれ死ぬのです。
 モーテルでは、することがないくせに、いやに忙しそうなかっこうをしている男がでてきます。ここに出てくる人間たちは、みんな無機質で思いやりに欠けた自己中心的なイメージで描かれます。人間の社会に入り、くまは「大事なことを忘れてしまったらしいな」と思います。

 イラストは写実的で、建築物なども正確に描かれ、漫画のように1ページにいくつかのコマで構成されています。イラストも文字も、丸い四角の枠に入っており、整然としていてきれいな一方、絵本のテーマと同様に無機質で人工的なイメージを与えます。
 皮肉たっぷりのこの絵本は、大人向きの絵本といえます。子どもが読んだら、ネガティブになるだけで、漠然とした不安を覚えて、社会や仕事などに悪いイメージを持ってしまいそうです。しかし、大人にとっては、社会をある程度知っており冷静な視点で見ることができるので、イラストからお話まで、これほど痛快で読み応えがある絵本はありません。


原書『Der Bär, der ein Bär bleiben wollte』の表紙画像

英語版→ 『The Bear Who Wanted to Stay a Bear

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更新日: 2006年09月02日